札幌市北区で2010年3月、認知症高齢者向けグループホーム「みらい とんでん」が全焼し、入居者7人が死亡した火災で、業務上過失致死罪に問われた運営会社代表の谷口道徳被告(58)=同市中央区=に対し、札幌地裁(金子大作裁判長)は14日、「火災の原因は特定できない」などとして、無罪(求刑禁錮2年)を言い渡した。
火災は10年3月13日午前2時15分ごろ発生。グループホーム1階にあった石油ストーブ付近から出火して施設約250平方メートルが全焼し、7人が死亡した。
公判では、出火原因や出火の予見可能性が争点となった。検察側は入居者の男性がストーブ上にパジャマなどを置いたため出火したと指摘。入居者の中にストーブの上に可燃物を置くなどの危険な行動を取りかねない人がいるのに、谷口被告は適切な措置をとらなかったと主張していた。一方、弁護側は「火災の原因は不明で、危険は予測できなかった」として無罪を主張していた。
判決は、ごく短時間しか自立歩行ができない入居者の男性が、一人でストーブまで歩いてパジャマを置いたことが火事につながったとは認められないと認定。火事の原因は特定できておらず、谷口被告の過失を問うことはできないと結論づけた。
札幌地検の山口英幸次席検事は「判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。(坂東慎一郎)