立野駐在所管内の住民が暮らす仮設住宅を訪ねて話す真崎巡査部長=南阿蘇村、板倉大地撮影
熊本地震以来、集落のほぼ全世帯が避難した熊本県南阿蘇村立野地区で、地元駐在所の警察官が民家のパトロールを続けている。住民の避難先の隣町に自らも引っ越して寄り添い、町と村を行き来する異例の勤務。「駐在さん」と呼ぶ村の人たちの声には温かみがこもる。
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南阿蘇村の隣の大津町。立野の住民の多くが入居する岩坂仮設団地で、高森署立野駐在所の真崎隆二巡査部長(43)が、顔なじみの住民たちに声をかけて回っていた。「今日は集会所に行かないんですか。(集会所には)マッサージありますよ」。玄関先で5分ほど立ち話をしてはまた隣を訪ね、住民が孤立しないようにと気にかける。「家がそのまんまで……」と不安を漏らした女性に「別の地区の人は自宅に戻れたみたいですよ」と声をかけると、和らいだ表情になった。希望を持ってもらえるような声かけを心がけているという。
立野地区は、4月16日の本震で阿蘇大橋とともに送水管が崩落し阿蘇方面への道路が断絶。水の供給も止まり約350世帯の大半が大津町の避難所に移った。
本震発生時、駐在所で寝ていた真崎さんは大きな揺れとバリバリという異様な音に目を覚ました。2歳と4歳の息子を妻に任せて飛び出し、被害がないか家々を回った。
その日から1週間、住民らが避難した村内の小学校にパトカーをとめて車内で寝泊まりし、4月末に住民が村と隣接する大津町の避難所に移動すると、「なるべく近くで過ごしたい」と、大津町のアパートに引っ越した。
「これからどぎゃんなっとですかね……」。地震発生当初、避難所で不安げな住民に問われ、答えに窮したことがある。だが、話をじっくり聞いていくうちに住民の表情が和らいでいくのを感じた。「せめて話を聞いてストレス発散になれば」。そう思い、これまで以上に頻繁に巡回し、丁寧に住民の話に耳を傾けるよう心がけた。
県警も真崎さんが大津町の避難…