手作業でカカオ豆を選別する=米サンフランシスコのダンデライオン・チョコレート、宮地ゆう撮影
厳選したカカオ豆から手作りする高級チョコ「ビーントゥバー」(Bean to Bar)の人気が米国や日本で広がっている。豆の産地や焙煎(ばいせん)方法など職人のようなこだわりが受け、高額でも売れていく。ワインやビールなどと同様に、うんちくが好きな愛好家らの心を溶かしている。
サンフランシスコで新しいレストランやカフェが次々とオープンしている流行発信地のミッション地区。カフェを併設した「ダンデライオン・チョコレート」は常に混んでいる。
棚に並ぶ板チョコの値段は56グラムで8ドル(約820円)からで、大手メーカーの数倍の高さだ。
商品説明は長い。「ローストしたアーモンド、チョコレート・ファッジ、甘いクリームの香り」。さらには「2015年収穫」と豆の収穫年まで書いてある。
これまでは、大手チョコ会社が商社などを通じて大量の豆を仕入れてチョコを作り、チョコレート店は大手から買ったチョコを溶かして加工することが多かった。これに対し、豆の仕入れから調合、焙煎、成形まで、すべての製造工程を一貫して行うのがビーントゥバーだ。
同店で使う原料は、中南米のカカオ農家から買ったカカオ豆とオーガニック砂糖だけ。香料や化学調味料は使わない。豆そのものの香りや味が楽しめる。
創業者トッド・マソニスさん(36)が店の奥にある小さな工場に案内してくれた。麻袋に囲まれて手作業で豆を仕分ける人から、できあがった板チョコを紙に一つ一つ包む人まで、数人が働いている。香ばしい香りが一帯を包む。マソニスさんは、カカオ豆の焙煎機を指さして「自分でソフトを書き換えて調整したんです」。
もともとはIT系企業の社長。家のガレージで、ヘアドライヤーで煎るなどして作ったチョコが友人に好評だった。08年に会社を売却した資金を元手に12年、本格的に作り始めた。
「欧州の職人は何十年も修業をするらしいが、そんな時間はない。ネットでカカオ豆を買い付け、作り方もネットで調べた」
米国菓子業界のアナリスト、カ…