高齢者を狙って寝具類を高額で「押し売り」するためにうその説明をしたとして、警視庁は、寝具卸売業の半沢裕逸(ゆきお)容疑者(41)=東京都町田市木曽東4丁目=ら5人を特商法違反(不実の告知)の疑いで逮捕し、19日発表した。同庁は、このグループが全国の高齢者約950人から4億9千万円分の契約を得ていたとみて、調べている。
生活経済課によると、逮捕容疑は昨年5月~今年2月、東京都稲城市や静岡県焼津市などに住む60~86歳の女性5人の自宅に押しかけ、布団を「点検」。スマートフォンで無関係のダニの画像を見せ、「この布団の中にいるダニだ」などとうその説明をし、計約240万円で乾燥剤や布団ケースなどを契約させたというもの。仕入れ値の30倍の高値で売りつけていたケースもあったという。
また、契約の解除(クーリングオフ)を申し出た女性らに「商品の袋を破ったのでキャンセルできない」などと解除を妨害した疑いもある。
逮捕された5人のうちの1人は、東京都などから業務停止命令を受けていたが、処分を免れるために別の屋号で営業を続けていたという。
国民生活センターによると、布団の訪問販売に関する相談は、2006年度は9935件あったが15年には2229件で、下火になりつつある。しかし、悪質な押し売りは後を絶たず、同センターは注意が呼びかけている。
認知症を患う関東地方に住む80代の女性は、今月に訪問販売で80万円の布団を購入した。家族が高額な契約に気づき、クーリングオフをしようとしたが、販売会社と連絡が取れないままだという。東海地方の80代の女性は「寝るだけで体調が良くなる」と言われて20万円で布団を購入したが、効果は得られなかった。
同センターは「悪質な業者は一人暮らしなどの高齢者を狙っており、身近な人による見守りが不可欠」としている。