ピエール・クレヘンビュールUNRWA事務局長=25日、東京都内、高野裕介撮影
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のピエール・クレヘンビュール事務局長が25日、東京都内で朝日新聞と会見し、内戦が続くシリア国内にいたパレスチナ難民の多くが家を追われ、「二重難民」になっていると訴えた。
UNRWAはパレスチナ自治区のほか、周辺国の難民キャンプなどに暮らす計約520万人に、食料や教育の支援をしている。
シリアには約56万人のパレスチナ難民がいたが、2011年以降、約12万人が周辺国や欧州に逃れ、シリア国内でも半数以上が住む家を失った。イスラエル建国以降に難民となった人たちと、次の世代が、まったく同じ経験をしていることになる。クレヘンビュール氏は「仕事も無くし、家族を養えなくなることで、プライドすら失ってしまう」と危機感をあらわにした。
かつて約18万人が住んでいた首都ダマスカス郊外の「ヤルムーク難民キャンプ」には、昨年4月以降に過激派組織「イスラム国」(IS)が侵攻した。水や電気が十分にない環境で数千人が取り残されている。危険な状態が続き、支援が難しいという。11年以降、シリアではUNRWAのスタッフ18人が死亡、25人が行方不明になっている。
ISとの戦闘などで、シリアやイラクに焦点が当たりがちな中東情勢だが、クレヘンビュール氏は「パレスチナ問題に目を背けるのは大きなリスクだ。常に主要な課題であり、後で気づいたときには悲惨な状況になってしまう」と、国際社会の支援継続を訴えた。(高野裕介)