共同記者発表に向かうフィリピンのドゥテルテ大統領(左)と安倍晋三首相=26日午後6時30分、首相官邸、岩下毅撮影
「我々は常に日本の側に立つ」。安倍晋三首相とフィリピンのドゥテルテ大統領による首脳会談は、日本側の期待に応えるかのようなドゥテルテ氏の言葉で始まった。米比関係が冷え込む中、日本が重視する南シナ海問題での日米比3カ国の協力関係維持に望みをつないだ格好だ。ただ大統領の発言は揺れ続けており、日本の思惑通りに進むかは不透明だ。
安倍首相が自身の言葉で、アジア太平洋地域での米国のプレゼンス(存在感)の重要性を伝える。日本にとって会談のハイライトは、南シナ海で中国が軍事拠点化を進める状況をにらみ、ドゥテルテ氏に日米比の協力関係の重要性を訴えることだった。
「オバマ政権の次の政権とは、よく話した方がいい」。安倍首相は会談でドゥテルテ氏にこう呼びかけ、自身が橋渡し役になってもいいと話した。ドゥテルテ氏は「(情勢が優位な)クリントン氏はいい」と応じた。出席者の一人が明かした。
日本側には、中国の南シナ海での動きは、冷戦終結や反米世論の高まりで1990年代に米軍が最大の在外基地といわれたフィリピン国内の基地から撤退し、「力の空白」が生まれたためとの考えが強い。そのため、2014年4月にアキノ前大統領が、米軍をフィリピンに再駐留させる軍事協定を米国と結んだことを歓迎し、6月末に就任したドゥテルテ氏もこの路線を継承すると期待していた。
ところが、ドゥテルテ氏は20日、北京での講演で「米国とは別れました。軍事的に、経済面でもです」と述べるなど前政権とは一線を画す姿勢を見せる。そのため、日本側は首脳会談を、多くの大臣らも参加する全体会合と数人だけの少人数会合の二本立てにした。「丁寧に真意を聞き、こちらの考えを伝えることが重要」との配慮からだ。
ただ、ドゥテルテ氏の「真意」…