達川ヘッドコーチ(右)と工藤監督
■スコアの余白
テレビ解説でおなじみの軽妙な語り口が突然、真剣味を増した。10月31日、新たにソフトバンクのヘッドコーチになった元広島監督、達川光男氏(61)の就任会見での一幕だ。評論家から再び現場に戻る気持ち聞かれると、一呼吸置いて「誘われた時、本当にうれしかった」。
スコアの余白
福岡には、特別な思いがあるという。広島一筋を貫いた15年間の現役生活を終え、指導者としての第一歩を踏み出したのがダイエー(現ソフトバンク)だった。1995年、王貞治氏(76)が監督1年目のシーズンに、バッテリーコーチとして新たな野球人生をスタートさせた。
だが、チームは低迷を続け、首位オリックスに26・5ゲームの大差をつけられて5位。達川コーチは、わずか1年で退団した。当時を振り返って「何の役にも立てなかった。王監督に恩返しというか、いい思いをしてもらえないまま辞めてしまった」。自責の思いは還暦を過ぎた今も消えることはなく、「ずっと心につかえていた」。
当時の王監督は現在、立場を変えて球団会長だ。達川コーチは言う。「王会長もいる。これで野球人生が終わっても悔いなし。終わってもいいな、というくらいの良いチャンスをもらった」。日本一奪還を目指す来季、21年ぶりにホークスのユニホームに袖を通した達川コーチにとっては、自身への「リベンジ」のシーズンでもある。(吉永岳央)