ライブの後、ステージで笑顔のりるささん(右)。相方のゆいさんと組んで「青空アバンティ」として活動する=東京都中野区、関田航撮影
■18歳をあるく
特集:18歳をあるく
「お笑い芸人りるさ」。それが千葉県に住む高校3年生小川梨瑠沙(りるさ)さん(18)の肩書だ。ツイッターで探した埼玉県在住で1学年下のゆいさん(16)とコンビ「青空アバンティ」を組み、多い月には10回近く舞台に立つ。制服風のベストとスカート、試験に出るような難解な用語をちりばめた「女子高生漫才」でこの秋、3503組がエントリーした漫才大会「M―1グランプリ」の2回戦へ進んだ。
きっかけは3年前。高校受験の勉強に追われていたある日のこと。息抜きがしたくなって漫才を見て、「すっごい楽しそう!」と驚いた。両親は離婚し、当時19歳の姉は短大生だったが、21歳の上の姉とは音信不通。家の中はピリピリして、暗く、お金もない。「でも私、笑えるじゃん」。漫才にのめり込んだ。
高校に進み、同学年の女子を誘って漫才を始めた。芸能プロが主催する高校生向けの地方大会で準決勝へ進むが、相方から「その日はおばあちゃんちにいくから」と断られた。悔しさをバネに新たに相方を見つけ、挑み続けた。
ネタが披露できるライブに出るにはエントリー費が必要で、交通費もかかる。平日の放課後は地元の回転ずし店で時給860円で働き、休日はバイトかライブでつぶれ、ディズニーランドも話題の映画にも行けない。今年5月、念願だった所属事務所が決まったものの、給料は出ず、若手ライブの出演者兼裏方だ。
一方、友人や同級生たちの進路は、介護や医療分野への進学・就職が多く、高齢社会だから立派だと感心する。高校の先生は「結婚して子どもを産んで」「フリーターはダメ」と言う。でも、バイトしながら「売れる芸人」を目指す自分を、友人は「すごいね」とうらやましがる。
「無謀だろうし、不安はある。でも今やりたいことに全力で打ち込まないと後悔する」
高校を卒業して、大学に進学するだけが道ではない。進学の機会があっても、社会に出て働くことを自ら選ぶ18歳も少なくない。仕事をするのは夢を実現するためという若者にとって、お笑い芸人は憧れの職業。政治家や作家への転身も含め、注目を集めるが、道は険しい。