文化祭で演じる永井美優さん=10月22日、奈良県大和郡山市の県立ろう学校
来年夏に開かれる全国高校演劇大会を目指す約2千校の中で、唯一のろう学校が奈良県大和郡山市にある。「言葉の壁」を乗り越えようと、手話と字幕で演じる独自のスタイルを練り上げた。「手話演劇ならではの魅力を伝えたい」。演劇部員たちは6日、奈良市のならまちセンターで行われる県大会に臨む。
10月下旬、静まりかえった県立ろう学校の体育館。1人の女子部員が前を見据えた。すぼめた右手をのど元から前へ突き出す。
〈彼は悲鳴をあげているのです〉。黒いパネルには、手話と同時に白い文字の字幕が映し出された。県大会で演じる鴻上尚史さん作「トランス」の一幕だ。
稽古は続いた。部員が床を踏みならす音と、静かなBGMが響く。
創部は2004年。高等部と中学部の生徒が一緒に活動する。セリフを声に出す劇も試みたが、審査員に「手話の個性を生かしてみては」と指摘された。そこで手話だけで挑んでみると、今度は通じなかった。
顧問の綿井朋子教諭(54)と…