ニューヨークで9日、敗北宣言をした会場で拍手を受けるヒラリー・クリントン前国務長官(右)。夫のビル氏が付き添った=ロイター
我々には打ち砕けない、最も高く、最も硬い「ガラスの天井」が依然としてある。だが、いつの日か、願わくは我々が考えるよりも早く、だれかが打ち破ってくれるに違いない――。敗北から一夜明けた9日のニューヨーク。米国初の女性大統領を目指した民主党・クリントン前国務長官(69)は、うっすらと浮かんだ涙を隠すように、言葉をかみしめながら語った。
特集:米大統領選2016
選挙集会では赤や青、白といった原色スーツが常だが、この日はシックなグレーのスーツ姿。集まった支持者を前に、普段の絶叫口調と打って変わって、静かに語りかけた。
「ガラスの天井」は、8年前の敗北宣言でも触れている。ファーストレディーや上院議員を経て立候補した彼女の前に立ちはだかったのは、当時40代の上院議員だったオバマ大統領。予備選で敗れ、「今回は『ガラスの天井』を打ち砕くことが出来なかったが、そのガラスには(予備選で獲得した)1800万のヒビが入っている」。撤退を余儀なくされたものの、手応えは感じていた。
捲土(けんど)重来の今回の選挙では、サンダース上院議員を予備選で破り、主要政党初の女性大統領候補に。7月の党全国大会では「『ガラスの天井』にこれまでで最も大きなヒビを入れることができた」と強調し、全国の少女に向けて「私が最初の女性大統領になるかもしれない。そして次はあなたの番だ」とメッセージを発信した。
にもかかわらず、今度は共和党の異端児トランプ氏に阻まれた。手が届きそうで、打ち破れない「ガラスの天井」。討論会では、トランプ氏から「ナスティーウーマン(嫌な女)」との暴言を投げつけられたこともあった。
女性から一身に期待を背負い、…