ステージに立つ情熱Dream。左からAoi、千鶴、NAO、山羊(やぎ)ちゃん、鈴瑚(Ringo)=8月30日、東京都渋谷区
40歳前後のいわゆる「アラフォー世代」が、アイドルとして奮闘している。きらびやかな衣装を身にまとい、10代のアイドルたちと同じように歌い、踊る。「勇気づけられる」と、ライブのたびに訪れる熱狂的な中年世代のファンも増えている。
「Are you ready?」。東京・渋谷のライブハウス。アラフォー世代でつくるアイドルユニット「情熱Dream」のステージは、リーダーNAO(美原奈緒さん)のかけ声で始まった。前列に陣取ったファンが歓声で応えた。
この日はメンバー5人が、他のアイドルグループなどとの合同ライブに出演し、オリジナル曲を含む4曲を披露。「アラフォーだからさ、クールダウンが必要なのよ」。曲と曲の間のトークでは、少し大げさにむせたような様子を見せて会場のファンを笑わせた。
情熱Dreamは今年6月、アラフォーアイドルグループの先駆けと言われる「サムライローズ」(SR)=5月に解散=の元メンバーを中心に結成された。メンバー5人はそれぞれ仕事や家庭を持ちながら、週末のライブやレッスンを中心に活動する。
39歳で「グループ最年少」というAoi(青木あゆみさん)は、長野県東部の佐久穂町在住。平日はパート勤務で衣料品販売チェーンの店舗に立ち、週末は高速バスで東京に通う。5年前、SRのパフォーマンスをテレビ番組で見て「歌い出しが完璧だった。ただのおばちゃんたちじゃない。私も同じようになりたいと思った」とSRのオーディションを受け、33歳でアイドルになった。
夫とともに2人の小学生がいる母親でもある。「家の仕事、子育てに忙しい同年代に『勇気を出して一歩踏み出せば、何でもできるんだ』と発信したい」。5年近くの活動で、「限界を自分で決めないことを学んだ」という。
情熱Dreamのサウンドプロデューサーを無償で引き受け、楽曲を提供する佐藤政志さん(53)は「プロ意識を持ってやっているところが魅力。いずれは紅白出場を目指して欲しい」と期待をかける。
元SRメンバーを中心に今年6月、「AIP(アラフォー・アイドル・Project)」という団体を立ち上げた。情熱Dreamを核に、「乙ナティック浪漫ス」「ねりマドンナ」といった新ユニットが加わった。オリジナル曲を共有し、メンバーの相互乗り入れを図る。26日には東京・浅草の「浅草花やしき」に一堂に会して、初の主催ライブを開く。
AIP代表のNAOは「社会には今でも、女性は若い方がいいという風潮がある。年を取っても、生き生きしている姿を発信したい」と話す。今後、アイドルだけではなく女優、モデル、司会業を志すアラフォー世代の女性にも間口を広げる考えだ。