世界中を大型客船で航海して被爆体験を語る活動に参加し、2012年にハバナでフィデル・カストロ前国家評議会議長と面会した広島の被爆者で在日韓国人2世の李鐘根(イジョングン)さん(87)=広島市安佐南区=は「核兵器廃絶を心から願う本当に惜しい人を亡くした。もう一度会いたいと願っていたのに、残念です」と語った。
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面会した際に被爆者の体験談を目を見開いて聴いていたというカストロ氏は「こんな悲惨な話は絶対に世界に伝え残さなければならない」と語り、被爆者らと固い握手を交わしたという。
李さんは「顔は迫力があるが親身であたたかい、お父さんのような方だった。安らかにお眠りください」と話した。
同じ活動に参加した石川律子さん(72)=広島市西区=は当時のカストロ氏を「被爆者の体験にじっと耳を傾けていたのが印象的だった」と振り返った。自国の歴史を語った際は、一時間半余り休むことなく話し続けたという。
石川さんのノートには「核廃絶を実現しないと、地球と人間は滅ぶ」とカストロ氏が話した言葉がつづられている。「被爆者に寄り添いながら『核兵器はいけない』と大きな声をあげられる人がいなくなったのは大きな喪失」と述べた。(高島曜介、松崎敏朗)