農業に使われる主な情報通信技術(ICT)
長年培った経験と勘。農家にとっての「企業秘密」を共有し、生産性を高めようという動きが広がっている。いずれも目には見えないものだが、情報通信技術(ICT)を使えば可視化でき、優良農家が持つノウハウも学べる。
■「経験と勘よりデータ」
A4判ほどの大きさのタブレット端末に、赤や青色の折れ線グラフが約10本映し出された。いずれも愛知県西尾市のキュウリ農家の「環境データ」だ。野菜の品質を大きく左右する要素の一つだという。
計測する環境データは、光合成に影響を与える温度と湿度、二酸化炭素(CO2)濃度の三つ。これらを温室内で常時測るのが「あぐりログ」という測定器だ。愛知県とベンチャー企業のIT工房Z(名古屋市)が共同で開発した。縦横各20センチ、幅10センチほどの白い箱形で、通信環境があれば、いつでもどこでもスマートフォンやタブレット端末などの画面で確認できる。計測データを増やすことも可能だ。
生産量の多い農家のデータも一目瞭然。「こうすれば、あの農家に近づけるのでは」などと参考にできる。JA西三河きゅうり部会(西尾市)の下村堅二さん(49)は「一つの農家が優秀なだけでは地域は良くならない。情報を共有して全体の栽培技術を高め、より良質な商品を提供したい」と話す。
下村さんは2011年から仲間…