ソチ五輪でロシア選手の尿を入れたものと同じ容器。2015年にフランスの検査所で撮影=AFP時事
ロシアの国家ぐるみのドーピング問題で、世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームが調査を終え、節目を迎えた。ただ、国家の関与を巡り、調査チームとロシア側の主張は平行線のまま。1年2カ月後に迫る平昌(ピョンチャン)五輪でロシア選手団は出場できるのか。判断のバトンは、国際オリンピック委員会(IOC)に渡された。
ドーピング「ロシア1千選手以上が関与」 WADA発表
ドーピングの深い闇
「私は私の仕事をした。あとは国際競技団体とIOCの役割だ」。調査を担当したマクラーレン氏は、9日の会見で語気を強めた。証言だけでなく、2014年ソチ五輪で採取した尿なども科学的に分析。選手本人のものとは違うDNAを尿から検出するなど裏付けも行った。さらに証拠とされる電子メールや書類など1千点以上をウェブサイト上で公開、国家主導のドーピング隠しが行われていたと断定した。
それにもかかわらず、ロシアのスポーツ担当のムトコ副首相は「ソチ五輪で指摘されているようなドーピング隠しは不可能」とロシア・タス通信に答え、調査結果を否定。スポーツ省次官が絡んでいることが7月に明らかになっているが、ロシアの改革を担当するスミルノフ氏(元IOC副会長)が「政府の一員というのは大臣以上。次官は政府の一員ではないので、国家ぐるみとは言えない」。全くかみ合っていない。
調査結果を受け、IOCは自ら検証し、今後の処分などを検討する。スポーツ省が主導するドーピング隠しが明らかになった一方、今回の報告ではロシア・オリンピック委員会(ROC)の関与を具体的につかめなかった。IOCが処分の対象とするのはROC。これがどのように影響するか。IOCの判断が待たれる。(ロンドン=河野正樹)
今回の報告書では、さらに詳しいドーピングの手口が公表された。
尿検体のすり替えでは、検査員…