オバマ大統領から稲塚さんの元に届いた手紙=9日、長崎市役所
オバマ米大統領からの手紙が、広島と長崎で被爆した二重被爆者の故山口彊(つとむ)さんを取材してきた映画監督の元に先月届いた。「二度の惨禍を体験した『二重被爆者』がいたことを胸にとめてほしい」との監督の求めに、オバマ氏は「このような惨禍が二度と起こらないための手段を問い直す責任を共有する」と応じた。山口さんは生前、「核なき世界」を訴えたオバマ氏に共感し手紙を出しており、その思いが7年間のときを経てつながった。
特集:核といのちを考える
監督の稲塚秀孝さん(66)=東京都=は2005年から山口さんを取材し、ドキュメンタリー映画を製作。広島訪問前の5月にオバマ氏に手紙を送った。映画の英語版DVDも同封。長崎で平和活動をしている山口さんの遺族との面会も求めた。
返事が届いたのは11月27日。「私は、核なき世界を目指す自分の強い気持ちを再確認するため広島を訪問した」「私たち自身は、武力ではなく共通の人間性で定義されるべきです」「それは被爆者の皆さんに残していただいた事例があってこそできる」などとし、オバマ氏のサインもあった。
稲塚さんが手紙を送ったのは、山口さんの遺志をくみ取ったものだ。09年、山口さんはオバマ氏が「核なき世界」を訴えたプラハ演説に感銘を受け、手紙を送った。「一緒に核兵器廃絶のために行動したい。二度被爆しながら『生かされている命』の重みを感じながら、命の限り訴えたい」と記した。しかし、返事がないまま、山口さんはその翌年、93歳で亡くなった。
山口さんの長女、山崎年子さん…