児童相談所が備えている耐刃防護衣。職権の一時保護のときにワーカーが危険な目にあうこともあるためだ
■第1章:一時保護(1)
連載「児相の現場から」
特集「小さないのち」
「いま夫婦げんかしている。子どもが巻き込まれるから、保護してほしい」
けんかをしている真っ最中の母親から児童相談所(児相)に電話があった。子どもは3歳と赤ちゃんという。
【キーワード】児童相談所(児相)と一時保護
【キーワード】児童福祉司
児相内で、安全確認や一時保護など虐待の初期対応にあたるチームから、ワーカーと呼ばれる児童福祉司のケイコ(仮名)とミエコ(仮名)が急行した。30代のケイコはチームに入って4年目。40代のミエコは2年目、保育士の資格を持ち、障害者福祉施設の現場などでの経験が長い。
2人が到着すると、母親が赤ちゃんを抱えたまま父親とののしりあい、もみ合っていた。赤ちゃんを受け取ろうと2人で手を出すと、父親がすごんだという。
「連れていくな。帰れ!」
虐待などで子どもが危険な状況にあると判断すれば、児童相談所は子どもを一時的に親から引き離す「一時保護」に向かう。その現場では、児相の職員たちの身が危険にさらされることもある。
夫婦は家の外に出てきて、取っ組み合いを始めた。夫婦に赤ちゃんを傷つける意図はないが、何かの拍子に赤ちゃんがけがをする可能性は否定できない。ケイコもミエコも必死だった。もみくちゃになりながらケイコが何とか赤ちゃんを確保し、その場を走り去った。
今度は父親が母親の首を絞め始…