鳥取県岩美町の底引き網漁船大福丸（沖島保司船長）が島根県沖で１４日に転覆し、乗組員１人が死亡、８人が行方不明になっている事故で、海上保安庁は夜を徹して現場海域の捜索を続けた。船体や８人の行方は分からないままで、１５日は朝から、ヘリコプター５機や巡視船艇７隻に加え、大福丸が所属する田後（たじり）漁協から漁船８隻が海に出て捜索にあたっている。

松江沖で９人乗り漁船転覆、１人死亡 不具合でえい航中

鳥取県の現地対策本部によると、１５日は沿岸部にも捜索範囲を拡大。午前８時半すぎには、転覆したとみられる海域に近い松江市美保関町の沖合約１・８キロの海底で漁網が見つかった。大福丸のものか確認を急ぐとともに、この周辺の捜索にも力を入れる。

厳しい冷え込みのなか、田後漁協所属の漁船は午前７時過ぎの日の出とともに境漁港（鳥取県境港市）を出て捜索に向かった。

その一つ重宝（じゅうほう）丸の甲板員、横山弘和さん（５２）にとって、大福丸の沖島船長は中学校の１学年先輩で、同じ水泳部だった。事故があった１４日も船で現場海域を捜し回った。

重宝丸は１４日まで大福丸とともに漁に出ていた。事故当時は強風が吹き、横波を受ける形になっていたという。「漁に慣れている沖島さんでも、荒波やトラブルには勝てなかったのか。早く見つけたい」

同じ岩美町の鳥取県漁協網代港支所に所属する祥鳳丸の浜田優樹（まさき）船長（５６）は５年前まで大福丸の船長で、機関長だった沖島さんに船長を引き継いだ。１４日は沖で操業中に事故を知り、漁を切り上げて捜索にあたった。１５日も捜索に加わる。「心配だ。何とかしたい」と険しい表情で語った。

大福丸の乗組員の家族は、対策本部や近くの宿泊施設で夜を過ごし、情報を待った。手がかりを探そうと、１５日朝から沿岸部を訪れた家族もいた。

■大福丸の乗組員（境海上保安部発表）

【死亡】甲板員 坂本孝裕さん（５４）＝鳥取県琴浦町

【行方不明】船長 沖島保司さん（５３）＝鳥取県岩美町▽機関長 吉田靖さん（５９）＝同▽機関員 木下浩さん（３９）＝同▽同 阪本誠さん（３６）＝兵庫県新温泉町▽甲板員 吉本憲治さん（５９）＝岩美町▽同 杉浦正樹さん（２８）＝鳥取市▽同 ウィ・ヤントさん（２１）＝インドネシア国籍▽同 檜木賢一さん（４５）＝島根県出雲市