木村汐凪さん=木村紀夫さん提供
娘の小さな遺骨が、行方不明から5年9カ月ぶりに父の手のひらに戻る――。東日本大震災で津波被害を受けた福島県大熊町沿岸のがれきの中から人骨が見つかり、県警のDNA鑑定の結果、大熊町の最後の行方不明者、木村汐凪(ゆうな)さん(当時7)の遺骨とわかった。避難先の長野県白馬村から捜索に通い続けた父紀夫さん(51)は「うれしいが、全て見つけるまで捜し続ける」。
「また汐凪に近づけた」 福島原発から4キロ、娘捜す父
紀夫さんによると今月9日、大熊町の自宅から数百メートル離れた海岸沿いで、捜索を手伝っていた作業員が汐凪さんのマフラーを発見。その付近から首やあごの骨も見つかり、汐凪さんのものと判明した。22日に紀夫さんに福島県警双葉署から連絡があったという。
紀夫さんは、津波で妻の深雪(みゆき)さんと父親の王太朗(わたろう)さんを失い、汐凪さんは行方不明になった。その後、原発事故で大熊町に避難指示が出され、紀夫さんも避難を強いられたが、2011年暮れから捜索を始め、現在の避難先の白馬村から往復千キロ以上の道のりを車で通って汐凪さんを捜してきた。
12年6月には、震災当時にはいていたとみられる汐凪さんの靴が、今回遺骨が見つかった場所の近くで見つかっている。放射線量が高く、いまなお大半で立ち入りが制限される帰還困難区域の大熊町では震災当初、自衛隊などによる大規模な捜索がほとんどされなかった。紀夫さんは「原発事故を起こした東電と捜索を十分してくれなかった国への怒りはある。発見まで6年近くかかったのは残念だ」と語る。
大熊町では津波で11人が犠牲…