会見で辞任を表明する電通の石井直社長=28日午後7時20分、東京都中央区、諫山卓弥撮影
広告大手、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24)が昨年12月に過労自殺した問題で、厚生労働省東京労働局は28日、同社と幹部社員1人を、社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで書類送検した。これを受けて電通の石井直社長はこの日夜、記者会見して来年1月に引責辞任すると表明した。
特集:電通・過労自殺問題
電通社長、来年1月に辞任 過労自殺「深く責任感じる」
厚労省は電通で全社的に違法な長時間労働があったかの実態解明に向けて捜査中だが、特定の容疑者を捜査途中に先行して書類送検する異例の展開となっている。
この幹部は、所属部署の部下の社員に労使が結んだ時間外労働時間の上限を超える残業をさせた疑いがある。
高橋さんの自殺について、電通は2015年10月から12月にかけて長時間労働の状態にあったことを認め、「心理的ストレスが自殺の原因になった可能性は否定できない。パワハラとの指摘も否定できない、行きすぎた指導がなされていた」と説明した。
石井社長は記者会見で、辞任の理由について「弊社社員が過重労働で亡くなったのは決してあってはならないこと。当局からご指導いただき、様々な対策をとってきたが、過重労働の抜本的解決には至っていない。経営を預かる身として深く責任を感じている」と話した。
電通では昨年12月、新入社員の高橋さんが長時間の過重労働により自殺し、今年9月に労災と認定された。厚労省は違法残業が全社的にはびこっているとみて、労災認定から1カ月余りで本支社を強制捜査。全社的な違法長時間労働の実態解明を進めている。今月23日からの3連休中に、石井社長を含む役員から任意で事情聴取も行うなど、立件に向けた捜査が異例のスピードで進んでいる。