大学入試センター試験に臨む受験生たち=2016年1月16日午前、京都市左京区の京都大、戸村登撮影
2017年度の大学入試センター試験が1月14、15日に行われる。今回は前年度より約1万2千人多い57万6千人が志願している。この時期の受験勉強の方法や生活面の注意点を専門家に聞いた。
特集:大学入試センター試験
■「思い出す訓練」カギ
勉強法の指南書もある東京大薬学部の池谷裕二教授(神経科学)に、この時期の勉強法を聞いた。
池谷教授は「人間には『流暢(りゅうちょう)性の錯覚』という現象があります」と話す。「今思い出せることは、将来も思い出せる」と誤解することだ。
テスト直前の勉強法として、教科書を読み直したり、ノートを見直したりすることも多い。だが、池谷教授によると、再読や線引きなどの勉強法は、ほとんど効果がない。逆に、何度も見直すことで「すらすら読める」と思い込んでしまうため、「分かった気になる」という弊害もあるという。
記憶の定着は、どれだけ知識を詰め込むかよりも、必要なときにどれだけ思い出せるか――がカギになる。つまり、小テストや単語帳を繰り返すなど「思い出す訓練」が必要だ。
使い慣れた問題集を解き直す場合も、「間違えた問題だけを解くのではなく、一度できた問題も解き直さなければならない」という。
普段のテストは、定着度を確かめるためというよりも、覚えるための道具だと考える。新しい単元を習う前にも、テストをしてから習ったほうが記憶も定着しやすいそうだ。「今の時期から新しい問題集に取り組んでも、センター試験にはまだ間に合う。過去問だけでなく、多くの問題を解いておいたほうがいい」と勧める。
まとめたノートを見直すだけでは効果がないが、まとめノートを作る作業そのものには覚える効果があり、自信にもつながる。英単語の暗記なども、手を動かして書くほうが覚えやすいことは、科学的に証明されている。
記憶の定着のためには、睡眠も必要だ。「必要な睡眠時間は人によって異なるが、最低でも6時間、できれば7時間を確保したい」
■生活リズム 朝型へ
河合塾麴町校の横井徹校舎長が強調するのも、生活リズムの見直しだ。
一般的に、受験生には、勉強の時間帯によって、「朝型、昼型、深夜型の3タイプがいる」という。
センター試験の開始時間は午前9時半だ。深夜に勉強している人は、朝に頭をフル回転させることができない。「どうしても本番でケアレスミスが出てしまう。まだ深夜型の人は、クリスマスのこの時期から、生活リズムを切り替えてほしい」。午前6時には起床し、朝食を済ませて勉強するようにする。もちろん、大みそかや正月も同じリズムを守る。
学習面では、「1カ月前には、完全にセンター試験対策に切り替えること」。この時期は、頭の中に入っているバラバラの知識を整理する時期にあたるという。「センター試験で失敗すると、2次試験や私立大学の試験にもダメージになりやすい」。2次試験や私大の試験対策は2~3割に抑え、センター試験に集中しよう。教科はまんべんなく90分単位で勉強し、20分程度の休憩を入れる。
気分転換には、目を閉じて好きな音楽を聴くことを勧める。「スマホやゲームは目や頭を使うため、リラックスできない」。安全にできる運動として、縄跳びや散歩、部屋の中でのダンスもいい。
家族は、受験生にプレッシャーをかけないように注意することが必要だ。「がんばってね」ではなく、「がんばっているね」と褒める。「まだ足りないと足をひっぱるのではなく、背中を押す気持ちで、大げさなくらい褒めた方が、子どもも伸びます」(杉原里美)