引退を決め、会見する広島の黒田
「もうしんどいですわ」
いつもの口癖で、プロ野球広島の黒田博樹は球団に現役引退を伝えた。9月中旬、マツダスタジアムの一室で鈴木清明球団本部長に「来年はどうする」と尋ねられた。
9月10日、東京ドームでの巨人戦はプロ20年間で最も印象に残るマウンドと語る。先発し、25年ぶりのリーグ優勝を決めた。「あれから本格的に引退を考え始めた」と明かす。41歳で迎えた大リーグからの復帰2季目。肩と首への痛み止めの注射はより効き目の強いものを使っていた。その患部には清めの塩を塗り、マウンドに上がっていた。
鈴木本部長は引退を静かに受け入れた。「驚きはないよね。彼には美学があるから」。体だけでなく、心も見ていた。「優勝が一番の目的だったから。来年、何をモチベーションにするのか」
フリーエージェント(FA)で黒田が2007年オフに大リーグへ移籍してからも、背番号「15」を空けて待っていた。いつも交渉の窓口役を務めていた。予感はあった。だから、本拠に戻ると、「ちょっと話そうや」と誘った。そこで重い決断を告げられた。
「気持ちに変わりはないか」。…