「なまくら刀」(東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵)
世界に誇る日本のアニメ。最初の国産アニメは短編映画として1917年に公開された。100年の歴史のうち、顧みられる機会の少ない前半期の作品の魅力を、杉並アニメーションミュージアム館長でアニメ作家の鈴木伸一さん(83)に語ってもらった。63年にテレビで「鉄腕アトム」が始まる前の時代に、こんなアニメがあったのを知っていますか?
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鈴木さんは、赤塚不二夫や石ノ森章太郎らが暮らした伝説のアパート「トキワ荘」の元住人。藤子不二雄作品に出てくる「ラーメン大好き小池さん」のモデルとしても知られる。
「僕が漫画からアニメの世界へ入った頃は、セル(絵を描きつける透明なシート)が貴重で、絵を洗い落として再利用した。その前の時代は、紙に描いたキャラクターを切り抜いて背景に重ねていた。100年前の『なまくら刀』を見たら、そんなやり方でもちゃんと面白い作品ができると分かる」
1917年の幸内純一「なまくら刀」は現存する最古のアニメ映画。なまくら刀を買わされた侍が、試し切りをしようとして返り討ちに遭う。「最初の年に既に傑作が生まれていた。憎々しげな武士の表情、コミカルな動きもうまい。短くてもピリッと風刺が利いている」
黒いシルエットの人物を背景に…