子どもへの特定の性犯罪で刑を受けた人について、再犯を防ぐため、警察が出所後に所在を確認したり面談したりする取り組みを続けている。近年、所在がわからない対象者は大幅に減り、再犯傾向もわずかながら改善。警察庁は「一定の効果を上げている」と評価している。
2004年11月の奈良市小1女児誘拐殺害事件をきっかけに、13歳未満の子どもに対する強姦(ごうかん)罪や強制わいせつ罪などで刑を受けた出所者の氏名や住居などの情報を法務省から警察庁に提供する制度が05年6月にスタート。各都道府県警本部と住居を管轄する警察署が連携して数カ月に1回程度、対象者の居住状況を確認して情報を共有している。
当初は、社会復帰の妨げにならないよう対象者に接触はせず、様子をうかがう程度で、10年5月末時点で対象者740人のうち200人(27・03%)の所在を確認できなかった。再犯も少なくなかったことから、警察庁は11年4月、同意を得られた対象者との面談を導入。各都道府県警は意向確認のため対象者を直接訪ねるようになり、所在を確認できないのは15年末で1521人中41人(2・70%)と大幅に減少した。
警察庁によると、面談している対象者の中には「もう二度と過ちを犯すまいという気持ちを再確認できる」と話す人もいる。複数の女児に相次いで声をかけた不審者として対象者が浮上し、警察が注意してやめさせた例もあった。
一方、面談導入前の10年末までの対象者の累計(各年末時点での対象者の合計)2860人のうち再犯で摘発されたのは49人で1・71%。14年末では7565人中129人で1・71%と変わらなかったが、15年末では9086人中147人で1・62%と微減だった。
対象者が面談に同意しない場合でも、各都道府県警は従来どおり居住状況の確認を続けている。警察庁の担当者は「対象者の更生状況への考慮も必要であり、取り組みには一定の制約があるが、一定の効果を上げている。引き続き円滑、効果的に運用し、再犯防止に向けた措置を図りたい」としている。(伊藤和也)
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〈特定の性犯罪出所者に対する警察の所在確認〉 13歳未満の子どもに対し、強姦(ごうかん)▽集団強姦▽強盗強姦▽強制わいせつ▽わいせつ目的略取・誘拐――の「暴力的性犯罪」を犯した出所者が対象。対象者は、制度が始まった2005年(6月以降の7カ月間)は106人で、以降15年まで毎年120~160人台で推移している。計1521人のうち15年末時点で578人が再犯の恐れがなくなったとして対象から外れている。