1人で育児や家事を担う「ワンオペ育児」を前回のエムスタで取り上げ、体験談を募ったところ、500件を超える投稿が寄せられました。「自分が病気でも横になれない」「共感してくれる人が誰かいたら」など、どれも切実です。当事者の声を紹介します。
投稿募集:育児中 パートナーや周りに望むことは?
「ワンオペ育児」私のことだ 夫不在、助けなく破綻寸前
子育て世代のページ「エムスタ」
大阪府吹田市のプログラマーの男性(38)は、ひとごとではない思いでワンオペ育児の記事を読んだ。昨年6月に離婚し、5歳の長男を1人で育てている。家事はそこそこで乗り切っているが、仕事が時間内に終わらないこともあり、「元妻はこんな気持ちだったのかな」と頭をよぎる。
以前働いていた会社は午後9時過ぎまで働くのが当たり前。できる限りのことはしていたつもりだが、保育園の送迎や子どもの看病は共働きだった妻任せで、家事の分担でよくもめた。早く帰宅できるよう3年前に転職したが、関係修復はできなかった。
今の会社は保育園のお迎えに合わせて午後6時には退社できるが、「妻がいたら、職場の人に『何で早く帰るの?』と思われるのでは」とも感じる。「男性は、子育ての第一人者とはみなされにくい。『今日は早く帰ります』と言える環境が当たり前になれば」と話す。
■社会の支援足りない
3月に出産予定の大阪市の女性(29)は「男が子育てをしたくてもそれを許さない社会がある」とツイートした。「会社は理解がない。育休は無理かも」との夫の言葉に衝撃を受けた。説得し、夫は会社と話し合う覚悟を決めた。
4歳の子どもがいる神奈川県の会社員女性(35)は「ワンオペ育児でした。きつかった」とツイッターでつぶやいた。結婚直後から最近まで夫は単身赴任。子どもと2人きりだと「今何かが起きたら、全責任を自分が負うんだ」と常に緊張していた。離ればなれだと、夫への相談は「事後報告」になった。家事代行や食材の宅配なども試したが、ワンオペ育児の抜本的な解決にはならず、「子どもも自分も成長し、慣れただけ。転勤や残業ありきの仕組みを何とかしてほしい」。
「母親も働き、輝かなくては、というプレッシャーがしんどい」とメールを寄せたのは、5歳と3歳の子どもがいる兵庫県西宮市の主婦(30)。「女性に求められる役割が増えた割に、社会の支援が足りない」と感じる。夫の転勤のたび、病院や遊び場などの情報集めに苦労した。一時保育も手続きが煩雑で利用しづらい。ママ友とつながりをつくるなどして今を乗り切ろうとしている。「でも、個人の努力だけで終わってしまったら、次の世代も解決しないまま。声をあげることも大切だと思うようになった」(仲村和代、信原一貴)
■個人の努力では限界
〈育児の関わり方の男女差について研究したことがある大和礼子・関西大教授(家族社会学)の話〉「投稿を読むと女性は家事に育児に仕事もと、すべてにフル回転を求められていることがわかる。労働環境が厳しくなり、仕事の負担も大きく、限界状態だ。男女とも個人の努力では限界があり、長時間労働が前提の働き方を変える必要がある」
■寄せられた投稿から
「私自身に余裕がなく、子どもの悩みに気付いてやれない。行事、地域やPTAの役員を子どもの数だけこなさなければいけない」(よっさんさん)
「母子家庭で養育費なしだった。大変だったのは、自分が倒れたらこの子はどうやって生きていくんだろうという不安。無事に成人して子育て卒業」(46歳シングルマザーさん)
「夫は激務。何か間違えれば子どもが死ぬかもと気が抜けず、どんな人間になるか全て自分にかかっているような重責で緊張。シングルの方のほうが大変でしょうが、パートナーがいるのに頼れないのもストレスフル」(猫の瞳さん)
「子どもが2人。どちらか病気になれば、片方も感染。病院に行き、嘔吐(おうと)で汚れた寝具・衣服の洗濯も」(40代男性さん)
「大変さやつらさをわかってもらえない」(千葉30代時短勤務さん)
「しんどいのは『マイナス気分を笑い飛ばせなくなる』から。イラッとした時など信頼する人がいれば笑えるが、1人だとできない」(あげよさん)
「夫に『残業で遅くなる』と言われ、私も残業できればあの案件を終えられるのに」(東京・4歳男子ママさん)
「インフルエンザでも寝ていられない。トイレも10秒で出なければ。私はベビーカーを玄関に広げて息子をくくりつけるか、おんぶでトイレを済ます」(都内30代専業主婦さん)
「小さな命を守ることに必死で、本当に大変な時は大変な状況であることにすら気づかない。声にならない声をキャッチできる手立てを考えなければ母子共に救われない」(リック0501さん)
「共働き。2人目はあきらめ、疲れ果てている。金銭的に仕事も辞められない」(専業主婦ばんざいさん)
「夫は事業に夢中、何を訴えても『僕だって大変』。男は仕事さえ頑張れば評価される。女は仕事も育児も、親の相手も、配偶者の親にも気を遣って、夫の世話も、子供を男女複数産んで、子供の出来もよくて、ママ友ともうまくやって、美しくないと評価されない」(男女は平等じゃないさん)
「投稿を読み『うちは恵まれてる?』と感じた。この感覚こそが自分も、相手も追い詰める思考につながりますね」(疲れましたさん)
「夫に期待しない=裏切られない=平穏という悟りの境地に達しました」(東京都40代主婦さん)
「泣いたときに抱っこできる人がいるかいないかで本当に違う」(3カ月のママさん)
「仕事でいやなことがあっても、出産前はカラオケや飲み屋でストレス発散できたが、今は2歳児と帰ってたたかわなければ」(大阪府30代女さん)
「私も大変だったから甘えるな、では状況は良くならない。親同士、困難をどう乗り越えたか共有できればいいですね」(4児の親さん)