公式戦出場の史上最年長記録となる対局で初手を指す加藤一二三九段=12日午前10時、東京都渋谷区、角野貴之撮影
将棋の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が12日、公式戦出場の史上最年長記録(77歳0カ月)を更新した。プロ入りから約63年になる大ベテランで、数々のタイトルを獲得してきた名棋士。一方、この日敗れると引退が決まる恐れがあり、現役を続けられるかどうかの瀬戸際に立たされている。
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午前10時。記録係が対局開始を告げると、先手番の加藤はすぐに力強い手つきで初手を指した。若手の石田直裕四段(28)との一戦は、加藤が最も得意とする相矢倉の戦いに。休憩をはさみ、夜までに決着する見込みだ。
現行規定でのこれまでの公式戦出場最年長記録は、2年前に95歳で亡くなった丸田祐三九段の76歳11カ月。今月1日に77歳になった加藤は21年ぶりに記録を更新した。対局前日、加藤は取材に「一度の不戦敗もなく、常に心を躍らせながら盤面に向かい、全力で闘い抜いて来られたことは誇り」とコメントした。
1954年、当時の史上最年少記録(14歳7カ月)でプロ入り。名人などタイトルを通算8期獲得した。対局数(2497局)と敗戦数(1172敗)は歴代1位だ。昨年12月には、加藤の最年少記録を抜いて10月に14歳2カ月で棋士になった藤井聡太四段と対戦し、話題になった。
「対局の時は昼も夜もうな重を注文」など、個性的な「伝説」は枚挙にいとまがない。「ひふみん」の愛称で知られ、民放バラエティー番組にも度々出演している。気合十分の対局姿勢は70代の今も変わらない。
還暦を過ぎてからも、名人挑戦権を争う順位戦の最上位「A級」の座を守っていたが、近年は成績が振るわない。今は最も下のクラスのC級2組に在籍。同組は各自10局戦って成績を競う。今期は51人のうち下位10人に「降級点」がつく。既に降級点が二つついている加藤は、三つ目がつくと規定により引退を余儀なくされる。
1勝6敗で迎えたこの日の対局…