電話がかかってくると、点滅する赤いランプ。児童相談所の電話のすべての回線がふさがってしまうこともある
■第5章「児相の素顔」(4)
分厚いファイルがある。
夜間や週末、休日の電話受付簿だ。児童相談所(児相)が閉庁している時間帯は、電話受け付け担当の職員が出勤し、児相にかかる電話の一次対応を一手に引き受ける。
連載「児相の現場から」
ある土・日の記録。子どもを一時保護されたひとりの母親から繰り返しかかってきた様子が記されていた。
午後8時前。「なぜ娘をかえさないのか。訴えるぞ」などと約11分。日付が変わった日曜の午前1時台に2回、午前4時半と午前5時に各1回、午前6時台に2回……。「30分以内に対応しろ」「担当ワーカー(児童福祉司)を出せ」などと一方的に話しては切れていた。
午前11時すぎから再び母親からの電話が入り始め、結局、土・日だけでこの母親から10回電話がかかってきた。記録には、その間、ほかの電話が入っていることも記されていた。
週末も夜中も早朝も、年末年始も児相の電話は鳴り続けている。
親からのクレームだけではない。児童養護施設や乳児院で子どもに何かあれば電話がかかってくるし、警察からの緊急連絡や住民からの虐待通報もある。
ある土曜の午後3時、虐待対応チームを率いる課長の携帯電話が鳴った。児相から自宅に戻ったばかりだった。
「また、なんだろうか」
この日の午前中は、担当エリアの児童養護施設から、他県に住む親族に引き取られる子どもの対応のために出勤していた。施設に子どもを迎えに行き、児相に来てもらった親族に引き渡して帰宅、その後は休むつもりでいた。
児童相談所には週末も夜間も関係なく、さまざまな電話がかかってくる。住民や警察からの虐待通報もあれば、保護した子どもの親からのクレームや、ときには悩みを聞いてほしい親からの電話もある。
電話は、この日の受け付け当番…