政府の科学政策の方針を決める総合科学技術・イノベーション会議(議長・安倍晋三首相)が、宇宙やサイバーなどの分野を中心に、民生分野の科学研究を軍事技術の推進につなげる具体策の検討を始めた。検討会を月内にも開くかを含め、議論の進め方を調整している。日本の科学研究は戦後、軍事と一線を画す形で発展してきたが、近年は軍事研究との距離が近づいている分野があり、政府の政策で、その傾向が強まる可能性がある。
同会議が原案をまとめ、昨年閣議決定された現在の科学技術基本計画は、安全保障に役立つ研究の推進に初めて言及。基本計画を受けた総合戦略でも、通信やセンサーなどの基本技術や航空機、ロボットなどの分野で「安全保障に資する可能性がある研究開発」を効率的に進めると位置づけた。今回始まった検討について会議の議員の一人は「基本計画を受け、どう具体化するか検討している」と説明する。現在は検討会設置に向けて、メンバーや検討期間、情報公開の方法などを検討している。
軍事と民生に使える技術研究については、防衛装備庁の研究助成が、今年度の6億円から来年度予算案で110億円に急増。昨年9月に稲田朋美防衛相が臨時議員として同会議に出席し、安倍首相が防衛省を含めた連携強化を指示するなど、政府として推進する姿勢を強めている。
学術研究をめぐっては日本学術会議の検討委員会が軍事研究の取り扱いについて慎重姿勢を示している。(竹石涼子)