足が悪かった両親。外出時に使っていた杖を見つめた次男は、突然の他界を悔やんだ=大阪市西淀川区、寺尾佳恵撮影
昨年末、80代の夫婦が大阪市内の自宅の浴槽で亡くなった。大阪府警は「熱中症により、もうろうとしておぼれた」と判断した。冬場に多い、入浴中の死亡事故。急激な寒暖差で起きる「ヒートショック」に加え、熱い湯へのつかり過ぎにも注意が必要なようだ。
夫(当時85)も妻(同83)も足が悪かった。夫は買い物や入浴などで一部支援が必要な「要支援1」。日常生活全般で介助が必要な「要介護4」の妻を助け、万一に備え、いつも2人で入浴していたという。
昨年12月29日。午後9時半ごろ仕事から帰った次男(58)は、風呂場の明かりに気がついた。「ふだんより時間が遅い」と感じたが、疲れもあり、そのまま1時間ほど仮眠。起きるとまだ電気がついていた。あわてて浴室に入ると、両親が浴槽内で同じ方向を向き、ぐったりしていた。
湯を張った際の設定温度は、いつも通りの48度。入浴時に何度だったかは不明だが、発見時の2人の体温が高く、他に病気の症状も見られないため、熱中症による溺死(できし)と判断された。1人がもう1人に寄りかかり、身動きがとれなくなった可能性があるという。
旅行好きで、連れ添って北海道から沖縄まで出かけた2人。「仲のいい両親でした」と次男は振り返る。このところ、父は外出時に杖を使うようになっていたが、「まだまだ元気だと思っていた」と声を落とした。