人物像がずらりと並ぶ「ふれあい石像の里」=富山市芦生
富山市の神通峡に沿って国道41号を車で走ると、対岸に数え切れないほどの人物像が並んでいる。公園? 宗教施設? 一体、何だろう。気になったので、恐る恐る訪ねてみた。
富山市中心部から南へ約18キロ。山々はうっすら雪化粧し、ダム湖になった神通川は静かに水をたたえていた。
意を決して「ふれあい石像の里」に向かう。正面から眺めると、自分に視線が集まっているようで、やっぱり怖い。
しかし、近づくと印象が変わる。何だか包まれるような安心感。
ピースをする人、本を広げる人、背筋を伸ばしてちょっと頑固そうに座る人……。あぐらをかいて、一緒に酒を酌み交わしたくなるようなおっちゃんもいる。服装、髪形、年齢、表情は様々で、今にも語りかけてきそうだし、それぞれの性格も伝わってくるようだ。
大理石製の人物像四百数十体が並ぶ「石像の里」を作ったのは、医療や福祉を手がけるむつみグループ創業者の故・古河睦雄さん。2013年に80歳で亡くなるまで事業に情熱を注いだ。
同グループなどによると、古河さんは生前、お世話になった人たちに感謝を表そうと、親しい人たちの写真を集め、その石像の製作を中国の職人に依頼。私財を投入し、1995年に里を作ったという。近くには、日中友好などを願って94年に作った「おおざわの石仏の森」もあり、500体の羅漢像が並ぶ。人物の石像とは別に「石像の里」にある羅漢像300体と合わせ、八百羅漢を形成している。
夫婦で里の管理をする江戸直子さん(70)は、人物像を毎日見つめ、ありがたみから前を通るたびに会釈する。「今も生きている人も大勢いますからね」
古河さんからは生前、「絵を買おうとしたけど、1人で眺めるのもつまらないからお世話になった人のために石像を作った」と聞いたという。半生を振り返り、友人らを思いながら「立体アルバム」を作った古河さんの粋な生き方に、思いをはせた。(高億翔)
◇
〈ふれあい石像の里〉 富山市芦生。「おおざわの石仏の森」とも入場無料。国道41号から新笹津橋北詰で東に折れて県道に入る。約1・4キロで「石仏の森」が現れ、さらに0・8キロほど進むと「石像の里」がある。無料駐車場あり。「石仏の森」には、両園を作った古河睦雄さんのスーツ姿の立像もある。問い合わせはむつみグループ(076・421・6363)。