盛岡大付に敗れ、グラウンドを後にする智弁学園の選手たち=阪神甲子園球場、角野貴之撮影
(25日、選抜高校野球 盛岡大付5―1智弁学園)
史上3校目となる春連覇への道のりを歩んでいた智弁学園。その道は、一つの変化球によって断たれた。
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チェンジアップ。直球と同じ強い腕の振りで投じられるが、球速は遅く、右打者の外角へ逃げながら沈んでいく。昨春の優勝チームより打力は上、とさえ言われた智弁の打線は、盛岡大付の左腕、三浦瑞のこの変化球に翻弄(ほんろう)された。
三回、チーム初安打を足場に築いた1死三塁で右打席に福元。最も頼りになるはずの主将だ。カウント1―2から外角に沈む112キロにバットが空を切る。「データではそんなに決まっていなかった球種。あまり頭に入っていなかった」
その残像に、狂わされていく。130キロ台後半の直球に差し込まれ、追い立てられるように、チェンジアップとは逆の軌道を描くスライダーにも手が出た。福元と同じく昨春優勝時の主力、4番の太田は九回無死満塁でスライダーを振らされ、三つ目の三振を喫した。「チェンジアップは捨てろという指示があったのに、絞りきれなかった」
盛岡大付も打力が高いチームだ。試合前、智弁の小坂監督は言っていた。「打線に力があることはすごく感じる。ただ逆に言えば、うちが(術中に)はめることも出来ると思う」。そう自信をのぞかせていたが、たった一つの変化球で焦らされ、術中にはめられたのは王者の方だった。福元は言った。「これだけ点数が取れないのは想定外だった」。短い春になった。(竹田竜世)