米国が1954年に太平洋・ビキニ環礁などで行った水爆実験で被曝(ひばく)し、がんになるなどしたとして、高知県の元漁船乗組員ら11人が船員保険の適用を申請していた問題で、被曝の影響を調べていた全国健康保険協会船員保険部の有識者会議は、元乗組員らの被曝線量が保険適用の目安を下回るとする報告書案をまとめた。
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この結果、事実上の労災にあたる船員保険の適用は困難な見通しとなった。
船員保険部は、原発労働者や医療従事者の被曝に伴う労災認定の基準に合わせ、保険適用の可否の目安を100ミリシーベルトとしている。昨年8月に設置された「船員保険における放射線等に関する有識者会議」は元乗組員が乗っていた船ごとに、被曝線量を推計。報告書案では、11人の被曝線量は最大十数ミリシーベルトで、いずれも100ミリシーベルトを下回っていたとした。
うち1人は、申請前に別の研究者が奥歯を調べ、319ミリシーベルトと推計。しかし有識者会議では、水爆実験との因果関係は特定できなかったという。(西村奈緒美)