トランプ政権によるシリア攻撃に対して、日本政府は7日、「米国政府の決意を支持する」と表明した。日本独自の情報は限られ、国連安保理決議も採択されない中での米政権による「単独行動」。ただ、同盟国である日本は化学兵器の非人道性を前面に掲げ、米政権の軍事行動ではなく、その政治姿勢に支持を示す苦肉の策を講じた。
特集:シリア情勢
攻撃判明から約2時間後の7日正午すぎ、岸田文雄外相は「事実関係の確認と調査に努めている」と記者団に繰り返した。外務省幹部は「日本政府としての対応を決めるのに、あと数時間はかかる。まず状況を確認しなければならない」と語った。
同日午後3時すぎ、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合を開催。その場で政府の対処方針を確認した上で、終了後に安倍晋三首相が米政権の決意に対する支持と、ミサイル攻撃は「これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置」だと位置づけて理解を表明した。
今回、化学兵器の使用についてアサド政権が否定する中で、日本政府は「シリア軍が化学兵器を使ったという証拠を持っていない」(政権幹部)という状況だった。さらに、米政権による攻撃の正当性を担保する根拠も判然とせず、外務省幹部は「国際法的な根拠に乏しく、米政権への『支持』まで表明できない」と率直に語っていた。
そこで日本政府が編み出したのが、英国が表明したような軍事行動そのものへの支持ではなく、米政権の姿勢に焦点を当てる手法だった。まず、化学兵器の使用についてはアサド政権を名指しせず、「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意」を取り上げて支持。その上で、軍事行動をいったん「これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置」だと位置づけ、それに理解を示すという表現にした。
官邸幹部は「手放しの支持ではない」と認める。さらに、今回の攻撃により米ロ関係が緊張するのは必至で、ロシアのプーチン政権と北方領土交渉を進展させたい日本政府は、日ロ交渉に与える影響を懸念する。
攻撃判明後に米政府を含む関係国から情報収集し、「決意支持」表明に至った日本。では、米国からの事前通告はあったのか――。菅義偉官房長官は7日の記者会見で問われ、「我が国と米国は常日頃から緊密に連携をとっている。コメントは控えたい」と明言を避けた。(小野甲太郎)