最近、中国で「定年年齢の引き上げ」の議論が再び起きている。中央政府は「第14次五カ年計画(2021‐25年)」と「2035年までの長期目標」において、「法定の定年退職年齢の延長を漸進的に実施する」と明確に言及している。つまり、「定年年齢の引き上げ」がこれまでの政策検討という段階から、現実の実施段階へ進んだことになる。人民網が各社の報道をまとめて報じた。
「定年年齢の引き上げ」が必要な理由とは?
中国社会科学院世界社会保障研究センターの鄭秉文センター長の言葉を借りるならば、定年年齢を引き上げる主な原因は、平均寿命が延び、ライフサイクルが変化しているからだ。これは人類社会共通の流れで、ほとんど全ての国が退職をめぐる政策を調整している。
中国の状況を具体的に見ると、平均寿命が新中国成立初期の約40歳から2019年には77.3歳まで上昇した。一方、法定退職年齢は男性60歳、女性幹部55歳、女性従業員50歳で、新中国成立初期から約70年経った現在まで調整されたことは一度もない。
中国人口発展動向図(画像は「中国発展報告2020:中国の人口高齢化の発展動向と政策」から)。
学者は、「第14次五カ年計画」期間中、中国の人口高齢化の動向は2つの大台を突破すると予測している。
1つは、中国の60歳以上の高齢者人口が同期間終盤に3億人の大台を突破すると予想されていること。国連は、「高齢化社会」に突入する基準として、60歳以上の人口の割合を総人口の10%以上と設定している。中国を見ると、2019年末の時点で、その割合が既に18.1%に達している。
2つ目は、同期間終盤に、中国の高齢者扶養率が20%の大台を突破すると予想されていること。つまり、生産年齢人口100人が高齢者20人を支えなければならないということになる。20年前、その数値は9%にとどまっていた。労働者の負担が一層増していることは明らかだ。
中国は「経済的に豊かになる前に高齢化が進む」という難題に直面している。そのような動向下では、「定年年齢の引き上げ」は人口の高齢化という現実の必要に効果的に対応する方法の一つとなる。まず、法定の退職年齢を引き上げることで、早すぎる退職が原因のヒューマンリソースの浪費を避けることができる。また、定年年齢を引き上げるということは、年金の掛け金年数も伸びるということで、資金收入が増え、高齢者扶養率も下がる。
中山大学嶺南学院の彭浩然・金融学部教授は、「他の国と比べると、中国の退職年齢は明らかに低い。人力資源・社会保障部(省)の資料によると、近年、米国やドイツ、日本などが法定の退職年齢を段階的に65歳、ひいてはもっと高くまで引き上げた」と指摘する。
鄭センター長は、「第13次五カ年計画(2016‐20年)と比べると、第14次五カ年計画は、実施、つまり、実際に行動することを強調している。トップレベルデザインの段階から、実際の行動に移り、法定の退職年齢引き上げは大きな流れとなる」との見方を示す。
定年年齢の引き上げはいつ頃から始まるか?
今年9月、人力資源・社会保障部はネットユーザーの定年年齢の引き上げに関する質問に答えた際、「党中央、国務院の計画、支持に基づいて、人口高齢化や伸びる平均寿命などに伴う必要に合わせ、関連の政策、対策を真剣に検討している」とした。
具体的な実施時期について、鄭センター長は、「中央政府の情勢判断次第で、実際の状況に基づいて、政策実施のリズムが計画される」とし、「定年年齢の引き上げは、急転直上式であることは考えにくく、1度に5年引き上げられるということにはならないことは間違いないはずだ」との見方を示す。
そして、「斬新的に法定の退職年齢を引き上げる詳しい内容を盛り込んだ政策の制定がカギで、それがスケジュール、ロードマップとなる。そして、各年齢層の人々がはっきりとした心積もりをし、改革をめぐる共通の認識を築くことができるようにしなければならない」と指摘する。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年12月17日