今季初勝利したソフトバンク先発の千賀=時事
(11日、ソフトバンク3―0日本ハム)
速球は最速153キロ。ソフトバンクの千賀が投じる一球一球には、魂がこもっているようだった。
野球の世界一を決めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から約3週間。大会で、大リーガーさえ恐れさせたお化けのように落ちるフォークも面白いように決まった。「完投」こそならなかったものの、8回で計13三振。堂々たる137球で今季初勝利を飾った。
準決勝で敗れたWBCでは、先発、中継ぎでフル回転し、計4試合で16奪三振、防御率0・82。侍ジャパンで唯一の優秀選手に選ばれ、その注目度は一気に高まった。「すごいなWBCは」。周囲からの期待の大きさを感じながら、前回の今季初先発の楽天戦ではそれが裏目に出た。4回を投げて自己最悪7失点でKO負け。「1点もあげちゃいけない」という強い思いが焦りを生み、歯車を狂わせた。
この日のマウンドで目指したものは、ただひとつ。「1点とられても、長い回を投げる意識を持つ。去年もそういう考え方だった」。自己最多12勝を挙げた昨季の心構えに立ち返り、無心に右腕を振り続けた。
前回の敗戦を糧に、この日の力投で自信を取り戻した。「7失点で悔しい思いをした。このつらい1週間を過ごしたくない一心で投げました」。育成からはい上がった24歳が、さらなる伸びしろを感じさせた。(甲斐弘史)
○甲斐(ソ) 二回に三塁走者を刺し、育成出身で同期の千賀を好守で助ける。「狙っていた。千賀の良い球をどんどん出していこうとリードした」
○内川(ソ) 五回に2点二塁打。「甘い球を初球から打とうと思って打席に入った。いい追加点になって良かった」