ラットの眼球に皮膚の細胞を移植することで近視が進むのを抑えられることが、東京医科歯科大の大野京子教授らの研究でわかった。12日付の国際科学誌電子版に論文を発表した。研究グループは、網膜剝離(はくり)や視神経障害を引き起こし、失明にもつながる「病的近視」の進行を防ぐ治療法につなげたいとしている。
病的近視は眼球が前後に長くなり、いびつに変形する病気。40歳以上で5%の患者がいると推計されているが、近視が進むのを抑える治療法がない。
研究グループは、眼球の変形で外側の強膜(白目)が薄くなることで、膜の主な成分のコラーゲンとコラーゲンをつくる線維芽細胞が減ることに着目。人工的に近視にしたラットの目に、ヒトの皮膚から採取した線維芽細胞を移植した。
その結果、新しいコラーゲンの層が作られて強膜が補強された。移植していないラットに比べ、その後の近視の進行が4割抑えられたという。線維芽細胞は培養が簡単で、自分の皮膚の細胞から採取すれば移植しても拒絶反応がない。
大野教授は「今後はヒトの病的近視で抑制効果があるかどうかの研究を進める。病的近視になるリスクの高い人は子どものうちからわかるので、発症前に移植して防げるようになればいい」と話す。(水野梓)