弁天島の岩場にびっしりと上陸したトド(3月11日、北海道稚内市、稚内水産試験場提供)
北海道稚内市の宗谷岬沖の無人島・弁天島に、千頭を超すトドが集結している。理由ははっきりしないが、稚内水産試験場の後藤陽子さんは「冬は島周辺で漁船の往来がなく、近年は大しけの日が少ないことも居つく理由かも知れない」と話す。数は年々増えており、地元は漁業被害を心配している。
弁天島は宗谷岬の約1・2キロ沖にある。稚内水試が3月11日に小型無人飛行機(ドローン)を使って観察したところ、1500頭を確認した。4月に入り、さらに増えているとみられる。
トドは例年10月にロシア・サハリン州東部から餌を求めて北海道沿岸に南下し、5月に再び北上する。弁天島はその中継地にあたる。稚内水試によると、5年前までは100頭程度だったが近年急増し、昨年6月には約2千頭に増えた。繁殖に加わらない若いトドは7月まで居座るという。
環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種だが、タコやニシンなどを狙って漁網が破られる被害が深刻で、水産庁が上限を設けて駆除している。礼文島など駆除に取り組む地域ではトドが減っており、回遊ルートが変わった可能性もある。(奈良山雅俊)