皇居周辺を走るワンデーポートの入所者らを見守る中村努施設長(右)=東京都千代田区
ギャンブル依存症からの回復を支援する認定NPO法人「ワンデーポート」(横浜市)が、回復プログラムにランニングを採り入れている。賭け事にのめり込んだ人たちが走ることに熱中。生活が充実して考えが前向きになり、体づくりにつながる「一石二鳥」の効果が出ているという。
タッタッタッタッ――。4月上旬、東京・皇居周辺で、黄色いTシャツのランナーたちが足音を響かせていた。ギャンブル依存症の経験を持つ、ワンデーポートの入所者や元入所者だ。
「自分でも不思議だが、マラソンでギャンブルが必要なくなった」。30代の男性会社員は、引き締まった顔に白い歯をのぞかせた。
この男性は社会人2年目のとき、仕事のストレスから競馬にのめり込んだ。平日は職場のパソコンで地方競馬に賭け、土日は負けを取り戻そうと場外の馬券売り場へ。給料をつぎ込み、同僚たちにウソをついては金を借りた。人事担当者に問い詰められ、会社を休職。5年ほど前にワンデーポートに入所した。
施設長の中村努さん(49)の勧めでウォーキングに取り組むうち、寮の仲間とランニングを始めた。「お互いの体が引き締まっていくのが楽しくて」。走る距離は延びていった。
1年後に退所し、再就職後もランニングは続けた。平日は朝4時起きで走り、距離は月に約200キロ。フルマラソンは3時間半を切り、100キロのウルトラマラソンも完走した。男性は「マラソンで余暇と生活、仕事のバランスが取れるようになった。私のように物事にはまりやすい人にマラソンは向いている」。
ワンデーポートが2000年に開設された当初は、自分の過ちと向き合うプログラムが中心で、ほぼ一日中、ミーティングを続けていた。だが、東日本大震災のボランティアなどで体を動かす機会が増え、ジムでのトレーニングを採り入れると、入所者が楽しんで通うようになった。中村さんは「ギャンブルに代わる上手な遊び方、楽しみ方が重要だ」と考え、ランニングを採り入れたという。
現在は週1回、5キロのウォー…