インドネシアのジャカルタ特別州知事選の決選投票が19日あり、新顔で元教育文化相のアニス・バスウェダン氏(47)が各種調査の集計で当選確実となった。現職のバスキ・チャハヤ・プルナマ氏(50)を盟友とするジョコ大統領の政権運営にも影響が出る可能性が出てきた。
ジャカルタ知事が無罪主張 イスラム教「冒とく」事件
少数派の中華系キリスト教徒のバスキ氏は昨年9月にイスラム教を冒瀆(ぼうとく)する発言をしたとして公判中。国民の9割を占めるイスラム教徒の支持を失った形だ。選挙戦を通じてイスラム保守強硬派が発言力を強め、「穏健イスラム」という同国の評判も揺らいでいる。
選管の公式発表は5月上旬の見通し。一方で、信頼度が高いとされる複数の民間調査機関によるサンプル集計結果によると、得票率はイスラム教徒のアニス氏が55~58%、バスキ氏は41~45%で大差がつき、バスキ氏は記者会見を開いて敗北宣言した。知事選は3人が立候補。2月の1回目投票で過半数の得票者がおらず、上位のバスキ、アニス両氏による決選投票となった。新知事の任期は10月から5年間。
敗れたバスキ氏は、前知事だったジョコ氏が2014年10月に大統領に就任したことに伴い、副知事から選挙を経ずに昇格。街路の美化や汚職撲滅などに取り組んで支持は高かったが、イスラム教を侮辱したとも取れる内容の昨年9月の発言が「致命傷」となった。
イスラム強硬派は、数十万人規模の抗議集会を相次いで首都中心部で開催。バスキ氏は強硬派団体に宗教冒瀆罪で刑事告発された。選挙戦でも、非イスラム教徒を指導者に選ばないよう訴える声が反バスキ派から高まった。
アニス氏の当選はジョコ氏にとっても打撃だ。アニス氏を推したのは、14年の大統領選で接戦の末に敗れた、野党指導者プラボウォ氏。19年の次期大統領選をにらんで、アニス氏が中央政府に反発する動きを見せる可能性もある。ジョコ氏は19日、「誰が勝っても、結果は受け入れねばならない」と述べた。(ジャカルタ=古谷祐伸)