難題の候補者調整
衆院小選挙区の新しい区割り案が示され、候補者調整に向けた号砲が鳴った。選挙区がなくなったり、あちこちで線引きが変わったり。2014年の衆院選で圧勝した自民党は、現職同士が選挙区を奪い合う構図で、比例区転出をめぐる駆け引きに。野党4党の共闘にも微妙な影を落とす。
衆院区割り見直し案を勧告 一票の格差、1.999倍に
衆院区割り変更、あなたの選挙区は?
自民の二階俊博幹事長は19日、東京都内で記者団に、区割り変更に伴う候補者調整について「最大公約数で皆が理解し合えるような結論を見いだすように努力する。相当な力仕事になるだろう」と表明。立候補を望む現職はできる限り出馬できるよう調整する考えを示した。
難題なのは選挙区が一つずつ減る青森、岩手、三重、奈良、熊本、鹿児島の6県。現行の計27選挙区に自民現職が比例復活を含めて25人いる。これが21選挙区に減るため、党執行部はまず現職同士や各県連に調整を委ねる方針だ。それぞれ「お国事情」があるため、党主導では「党内の渦を新たにこしらえることになる」(二階氏)からだ。
2人を選挙区と比例区に立候補させ、選挙のたびに入れ替える「コスタリカ方式」と、比例区に回して当選確率が高い順位で優遇する方式が当面考えられる対策だ。前回は5県で選挙区が減ったことに伴い、1県でコスタリカ、4県で比例区転出を行った。
三重では前回小選挙区を勝ち抜いた3人の中でのコスタリカ導入案が浮上。1区の川崎二郎元厚生労働相、4区の田村憲久前厚労相、5区の三ツ矢憲生元外務副大臣の現職3人による調整だ。コスタリカを導入するかどうかに加え、誰と組むかも課題だ。県連会長の田村氏は記者団に「あらゆる方法がある」と語り、関係議員で話し合う考えだ。
小選挙区を自民現職が占める「独占県」の熊本でも、4区選出で75歳の園田博之氏の比例区転出と上位で優遇する案を検討している。園田氏は「小選挙区に出たいが、調整は党本部と県連に委ねたい」と話す。
ただ、自民は内規で比例区への立候補を73歳未満に限る「定年制」を設けている。党青年局は2月、ベテランを優遇することへの反発から古屋圭司選挙対策委員長に「定年制の維持」を申し入れた。鈴木馨祐局長は朝日新聞の取材に「党の活性化につながる世代交代をきちんとできることが大事。原則は原則だ」と話す。区割り変更とともに東北、北関東、近畿、九州の4ブロックの定数も各1ずつ減る。比例優遇候補が増えれば、さらに復活当選の枠が減ることは避けられないため、関係議員同士の綱引きが激しくなりそうだ。