音楽複合施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」の設計を担当した建築家の坂茂氏=20日午後、フランス・パリ郊外、杉本康弘撮影
仏自動車大手ルノーの工場跡を再開発した音楽複合施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」がパリ郊外に完成した。22日の一般公開を前に、設計した建築家坂茂(ばんしげる)さんが20日、朝日新聞などに外観や内部を公開した。
パリの西側にあるセーヌ川の中州セガン島に、クラシック音楽専用のコンサートホール(1150席)と最大6千人収容の多目的大ホールなどが設けられた。川に浮かぶ船のようだ。
「パリの西玄関にふさわしい記念碑的な建物」との要望を受け、坂さんが考えたのが環境面での配慮を意匠に反映させること。木材を格子状に組み合わせた卵形のコンサートホールは、ファサード(正面部分)を太陽光パネルで作った三角形の「帆」が覆い、太陽の動きに合わせてレール上を左右に動く構造になっている。
「来る時間によって建物の形が違うというのは、建築として珍しい。初めてのアイデアで、これが一つのモニュメンタリティー(記念碑的なもの)になるのではないか」と坂さん。帆が常に太陽を向いて発電効率を上げるほか、ロビーのガラス面に日陰を落とすことで空調効率も上げている。
世界的な音響設計家豊田泰久さんと組んだコンサートホール内部は、天井に耐火処理した紙筒をはめ込み、内壁に波形の合板を使って音響効果を高めた。大ホールでは正式オープン前日の21日、ノーベル文学賞を受賞した歌手ボブ・ディランさんが公演する。(パリ=石合力)