中小企業のほぼ半分が人材不足を感じていることが、政府が21日閣議決定した今年の中小企業白書で明らかになった。景気回復で中小企業の経営環境には明るさも戻っているが、人手不足で商機を生かせない懸念が高まっている。
白書では、専門性の高さなどから高度な業務を担う「中核人材」と、比較的定型的な業務を担う「労働人材」に分けて調べた。回答した約3千社のうち、中核人材については48・2%、労働人材は52・6%が「不足」とした。「過剰」と答えたのは、それぞれ1・5%、2・6%にとどまった。
成長期にある企業で、中核人材の不足によって「新事業・新分野への展開が停滞している」としたのは58・4%、労働人材の不足によって「需要増加に対応できず機会損失が発生した」との回答は70・6%に達した。白書は「新卒者、転職者とも大企業に比べて伸び悩み、人手不足感は強まっている」と指摘した。
景気の回復もあり、昨年の倒産件数は8446件でバブル期の1990年以来、26年ぶりの低水準だった。一方、休廃業・解散は2万9583社で、過去最高となった(東京商工リサーチ調べ)。経営者が高齢化して後継の人材がいないことが、中小企業の存続にも影響を及ぼしている。(斎藤徳彦)