ロシアと英国訪問を終え、内外記者会見で発言する安倍晋三首相。手前は原稿投影装置=29日午前10時6分、ロンドン市内のホテル、飯塚晋一撮影
英国訪問中の安倍晋三首相は29日午前(日本時間同日夜)、ロンドン市内で記者会見し、北朝鮮のミサイル発射について「我が国に対する重大な脅威であり、断じて容認できない」と強く非難した。そのうえで、「同盟国である米国とも緊密に連携しながら高度の警戒態勢を維持し、国民の安全確保に万全を期す」と述べた。
特集:北朝鮮ミサイル発射
首相はまた、トランプ米政権が原子力空母カールビンソンを朝鮮半島近海に派遣したことに触れ、「すべての選択肢がテーブルの上にあることを言葉と行動で示していることを高く評価する」と語った。
北朝鮮の核問題をめぐる6者協議の再開については、首相は「対話のための対話は何の解決にもつながらない」と指摘した。さらに「挑発行動を繰り返し、非核化に向けた真摯(しんし)な意思や具体的な行動を全く示していない現状に鑑みれば、ただちに再開できる状況にない」と断言。圧力強化を優先させる米国の方針に寄り添う姿勢を鮮明にした。
一方、首相は会見で、保護主義や「内向き志向」の台頭が懸念されているとしたうえで「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有するG7がしっかり結束し、国際社会に明確なメッセージを発信できるよう、私もリーダーシップを発揮したい」と強調。5月下旬にイタリアで開かれる主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)で各国が足並みをそろえるよう取り組む考えを示した。
英国の欧州連合(EU)離脱については、首相は「欧州全体の結束がしっかり維持されながら、離脱が円滑かつ成功裏に実現することが必要だ」と指摘した。「開かれた欧州の維持が世界の関心事項だ。日本も英国やEUとともに、引き続き自由貿易体制の旗振り役を担い続けたい」とも語り、EU離脱に向けた英国の取り組みについては「移行期間を設けるなど、円滑で透明なプロセスを重視している」と評価。「域外国からの投資家を含め、全ての利害関係者が明確な見通しを持てるようになることを期待する」と述べた。(ロンドン=小室浩幸)