日本選手権で、男子選手として初めて出場した佐藤陽太郎(手前中央)。フリーコンビネーションで演技を披露した=池田良撮影
シンクロナイズド・スイミングが「男子禁制」だったのも今や昔。2015年の世界選手権で「男女混合デュエット」が初採用されたのに続き、今年の日本選手権には男子中学生が初めて出場した。20年東京五輪で混合デュエットが採用される可能性もあり、日本水泳連盟は初心者を対象にした講習会を行うなど、普及と強化に本腰を入れている。
初の男子選手は笑顔の中学1年生 シンクロ日本選手権
4月29日に東京辰巳国際水泳場であった日本選手権。「みんなのアイドル的存在」と関係者が認める男子中学生が、非五輪種目のフリーコンビネーションに登場した。中学1年の12歳、佐藤陽太郎(茨城・ジョイフルアスレチッククラブ)。中高生の女子選手8人とともに演技した。
丸刈りに近い短髪に、上半身裸姿。TVアニメ「ダンガンロンパ」のテーマに合わせ、ほかの8人と遜色ない華麗な足技や立ち泳ぎを披露した。最下位の10位に終わったが「練習はつらかったけど、泳ぎ終わったあとは楽しかった」と笑顔をみせた。
国際水連が男子選手の世界選手権出場を認めたのを受け、日本水連は16年、男子選手の国内大会出場を認めた。有望選手6~7人を対象にした1泊2日の強化合宿を年2回実施。当時小学6年生だった佐藤も合宿メンバーの一人だった。
しかし、日本水連の本間三和子シンクロ委員長によると、競技者登録している男子は十数人。そこで普及に力を注ごうと、16年4月には東京、10月には大阪で14~15人の初心者を対象にした2時間ほどの講習会を開き、スカーリングなど基本的な技術を指導した。
米NBCスポーツ(電子版)によると、国際水連は20年東京五輪の新種目として国際オリンピック委員会(IOC)に混合デュエットを提案したといい、本間委員長は「入るかどうかは別にして、本格的に強化をやっていかなきゃいけない」という。
一方で、男子選手を巡る環境はまだ整っていない。15年の世界選手権に出場した安部篤史(楓心舘シンクロク)は「各クラブは女子選手の強化に手いっぱいで、男子を受け入れる態勢がまだない」。今回の日本選手権では初めて男子更衣室が用意されたが、ハード面の整備に加え、遠征や合宿に男子選手を加えるのを敬遠する指導者も多い。
男子のシンクロは埼玉県立川越高水泳部をモデルに、俳優の妻夫木聡さんが主演してヒットした映画「ウォーターボーイズ」(2001年)で一躍脚光を浴びた。安部、佐藤の存在がさらなる呼び水になるのか。多くのシンクロメダリストを育てた井村雅代・日本代表ヘッドコーチは予言した。「男性、女性関係ない。それがスポーツのよさ。1人だけじゃなく、複数が出てくれば、ぱっと増えますよ」(照屋健)