1998年長野五輪を兄の暁斗と見に行ったときの写真を手にする渡部善斗
人生最初のジャンプは飛んだというより転げ落ちたものだったという。ノルディックスキー複合の2014年ソチ五輪代表で、ジャンプを得意とする渡部善斗(25)=北野建設=は、自分の子ども時代について声を潜めて打ち明けた。「子どものときからビビリなんです」
陸上・サッカー・ダンス…高木美帆の基礎を作った幼少期
■「痛いし、怖いし」大泣きだった
長野・白馬北小3年のとき、白馬村スキークラブでジャンプを飛んでいた兄の暁斗(28)を見に行き、クラブの人から「やってみないか」と誘われた。飯山シャンツェのミディアムヒルはK点が30メートル。小学生にとっては大きい。それまでに台の斜面を何度か滑り、慣れたつもりだった。「何も考えずに飛ぼう」。だが、スタート台から出た瞬間、腰が引けて尻もち状態に。背中からずり落ち、踏み切り台からストンと沈んだ。
「何が起こったか分からなかった。痛いし、怖いし」。大泣きだった。
その日からジャンプ台が怖くて嫌気がさした。練習に行っても斜面をスキーで滑り降りるだけ。「何をやっているんだろう」。そう悩んだ日もある。だが、コーチから「最初はみんな、そうやっていくもんだ」と諭された。同級生が2人いたため、半ば強制的に始めたジャンプをやめようとは思わなかった。