就任100日目のトランプ米大統領の集会で歓声を上げるトランプ支持者ら=ペンシルベニア州ハリスバーグ、ランハム裕子撮影
「米国第一」の保護主義的な政策で白人労働者層の心をつかんだトランプ米大統領は、貿易政策では表向き、強硬姿勢を崩していない。だが世界貿易の現実を踏まえ、態度を軟化させた政策もある。ホワイトハウス内では「国際派」の声が強まり、現実とのはざまで揺れている。
特集:トランプ大統領
「北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉し、米国にとって公正な協定を得られなければ離脱する」。就任100日を迎えた先月29日、米東部ペンシルベニア州の州都ハリスバーグ。トランプ氏が演説でそう訴えると、約1万人の白人らで埋まった会場が沸いた。
トランプ氏はこの日、NAFTAからの離脱を発表する考えだった。
米ワシントン・ポスト紙などによると、「強硬派」のバノン首席戦略官や米国家通商会議(NTC、当時)のナバロ議長が離脱を支持。一方で、クシュナー大統領上級顧問、米国家経済会議(NEC)のコーン議長ら「国際派」が離脱に反対した。パーデュー農務長官やロス商務長官は、大統領執務室に米国の地図を持ち込み、離脱で影響を受けるのはトランプ氏を支持し、メキシコなどへの輸出に頼る農業や製造業が盛んな地域だと力説したという。
トランプ氏は演説で「我々は離脱するつもりだった。カナダとメキシコの首脳が電話をかけてきて、交渉したいというから、わかったと言った」と話した。
トランプ氏は1月の就任直後、公約通り環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を決断。貿易赤字の原因の調査や、米国製品を優遇する「バイ・アメリカン」関連の大統領令に署名した。だが、公約だった中国の為替操作国の指定を見送るなど、重大な判断では現実路線もみせている。米ピーターソン国際経済研究所のゲリー・ハフバウワー氏は「トランプ氏の貿易政策は今のところ、当初よりずっと穏健だ。かみつくというよりは、ほえているだけだ」と指摘する。
政権内では、TPP離脱を主導…