集会で支持者らを前に手を振る、自由韓国党の洪準杓候補=5日、ソウル、遠藤啓生撮影
9日投開票の韓国大統領選は、選挙戦の最終盤を迎えた。朝鮮半島情勢が緊迫する中、北朝鮮問題が最大の争点になり、進歩(革新)系の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)候補(64)の融和的な政策について、北朝鮮に強硬な朴槿恵(パククネ)政権で与党だった保守系「自由韓国党」の洪準杓(ホンジュンピョ)候補(62)が厳しく批判。洪氏は支持率を伸ばしている。
特集:韓国大統領選挙
支持率トップの文氏は5回にわたるテレビ討論会で、北朝鮮に対する融和姿勢をたびたび示してきた。
「金正恩(キムジョンウン、朝鮮労働党委員長)が北韓(北朝鮮)の統治者と認め、核問題の解決のために会わなければならない」。2日のテレビ討論会では、核やミサイル実験を主導する正恩氏との首脳会談に前向きだと述べた。こうした姿勢を「北寄り」と批判する保守系の洪氏から、「北朝鮮は『主敵』ではないのか」と問われると、「大統領が『主敵』と規定するのは穏当ではない」とかわした。
発言の背景には、南北対話や経済協力を重視した金大中(キムデジュン)・盧武鉉(ノムヒョン)両政権の「太陽政策」を自身の政策の模範としていることがある。
文氏は今年1月に刊行した著書で「盧武鉉政府では南北間の軍事衝突が一件もなかった」と評価した。朴槿恵前大統領が制裁強化のため閉鎖した開城工業団地の再開を主張し「韓国企業の進出を増やすことと核問題を同時に進める」とも書いた。朴政権は、開城工団を通じた北朝鮮の現金収入が核・ミサイル開発に利用されていたとしている。
在韓米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)配備について「次期政権が決めるべきだ」と慎重姿勢を示しているのも、対話の障害になるとの判断があるとみられる。これに対し、洪氏は演説で連日「(文氏が当選すれば)親北左派政権の誕生だ」「米韓同盟が崩壊する」と批判している。ただ、文氏優位を脅かすには至っていない。