広島カープの売上高(左目盛り)とグッズ収入の推移(右目盛り)
プロ野球広島カープが独自の販売戦略で、グッズの売り上げをこの十数年で15倍に伸ばしている。25年ぶりにリーグ優勝した昨年は記念商品などで収益を押し上げた。グッズ収入は前年比17億3千万円増となる過去最高の53億円となり、球団の全売上高の3割近くを占めるまでに成長した。
昨年の広島リーグ優勝特集
■数分で売り切れ
選手も新グッズを待ち望んでいる。今季初めてサヨナラ勝ちした4月1日の阪神戦。本拠マツダスタジアムでのお立ち台で、殊勲の安部友裕内野手(27)は叫んだ。
「覇気が残っていたので打ちました。覇気Tシャツ、作ってください」。その2日後、限定600枚で通信販売された「安部サヨナラヒットTシャツ」はわずか数分で売り切れた。
サヨナラ勝ちや新人の初勝利などで企画される限定Tシャツのデザイン案は、試合直後に担当者で話し合う。感動が冷めないうちに届けるために、Tシャツ専用の工場まで設立した。
2006年に当時のブラウン監督が判定に抗議して一塁ベースを投げたことをうたったTシャツを、選手がおそろいで着た。その非売品が話題を呼んだことが、着想の原点となった。
新シーズンの商品に入れ替わる2月1日には、試合のないマツダスタジアムではファンが列をなした。友人と交代で6日前から並んだという人の姿も。毎年出すカシオ計算機とコラボした真っ赤な腕時計「G―SHOCK」などの限定品は、ネットオークションで定価よりも高値が付く。
■独創性で勝負
2月1日に用意された700種類のうち半分が新商品となる。加えて300種類を随時投入し、ファンを飽きさせない。
独創的で意外性に富む商品がそろう。今年は、扇風機に赤いヘルメットをのせた「赤ヘル旋風機」、新井貴浩内野手(40)ら選手の血管まで浮かび上がり、拳をかたどった「手形貯金箱」といった限定品を作った。
限定品は興味を持ってもらう入り口で、利益率は低い。アイデアは社内全体で募るだけではなく、最近は業者からの持ち込みも増えている。グッズ販売の責任者である松田一宏オーナー代行(37)は「不安はありますけど、インパクトのあるものを作れば、お客さんは反応してくれる。ただ、売るだけではない」。
在庫を抱えるリスクを避けるた…