2009年3月14日、当時J1の山形と名古屋の一戦は、降りしきる雪の中で行われた=山形県天童市のNDソフトスタジアム
「日本中で一年中サッカーができる環境を」。Jリーグのシーズン移行問題にからめ、日本サッカー協会の田嶋幸三会長は、雪国のクラブで冬季も使える練習場の整備に補助金を導入する考えを示している。緑の芝生、サッカー専用スタジアム、サポーター文化などを日本に定着させたJリーグの発足から25年。再びサッカーで社会を変えようという声が聞こえてきた。
今の3~11月のJリーグを、7月から翌年5月までのシーズンに移行させることが検討されている。主な目的は、「日欧間の選手の移籍活性化」「日本代表の強化日程の確保」。だが、真冬に試合を行うことが難しいと主張する雪国のクラブを中心に、シーズン移行は反発が強い。それならばと、田嶋会長が打ち出したのが、雪国で一年中サッカーができるようにするという案だ。
このアイデアに反応したのがJ1札幌だ。札幌ドームがあるが、屋外で養生する芝をドーム内に移動させる仕組みで、試合に使えるのは3月以降。雪を溶かす装置がある札幌市内の専用練習場は2月から使用できるが、天候次第では使えない。冬をまたぐシーズンになれば、雪をしのげる練習場を求めて本州以南で合宿しなければならず、現状ではシーズン移行に賛成できない。しかし、野々村芳和社長は「北国の生活を豊かにし、スポーツ文化を発展させられるなら面白い。インフラや人々の考え方を変えられるかもしれない。現状ではなく、10年先、20年先を考えたい」。
北海道は文部科学省の「全国体力運動能力調査」で全国最低レベルの成績が続いている。札幌は、サッカーの環境を変えることで、真冬も活動的な生活スタイルが広がれば、子どもの体力の問題も変えていけると考えている。また、札幌市が招致する冬季五輪も追い風にしようとする。構想中の新スタジアムでは、スピードスケートリンクに転換できるドーム形の競技場の建設を提案している。
一方、前のめりになれないのは…