ロッカーのデザインを担当した沢田万葉さん(左)、立野絵美さん(中央)、佐藤朋香さん(右)=JR盛岡駅
JR盛岡駅のコインロッカーが、利用者に人気だ。「元々は盛岡県」「スイカタンク」など、岩手県にまつわる雑学や名所などを絵と文章で紹介した。SNSでも評判を呼んでいる。
話題になっているのは駅東側の1階にあるロッカー。約80個の扉に、県内の名産品を描いたイラストや方言の解説、方言を使った川柳などがあしらわれている。「藤の木を三年間燃やしてあたると美人になる。」という迷信や「江戸時代のロシアの公用日本語は南部弁。」とのうんちくを見て、通りかかった人が思わず笑い声をあげた。
今年3月の盛岡駅と駅ビル「フェザン」のリニューアルに合わせ、JR東日本盛岡支社などが企画した。ロッカーは県産食材や地酒などを販売する「おでんせ館」に隣接し、利用者が歩きながら岩手県について学べるつくりになっている。
ネタは、独自のポップで知られる「さわや書店フェザン店」の従業員らが半年かけて集めた。仕事のかたわら、店内や県立図書館にある郷土本を100冊以上読みあさった。田口幹人店長(43)は「灰色のロッカーでは利用者が楽しめない。『これ知らなかった』と、好奇心を刺激する内容を目指しました」。
全体のデザインとイラストは、盛岡市の盛岡情報ビジネス専門学校デザイン科の学生3人が担当。実際に足を運んだり写真を検索したりして、県内の名所や名物を黒板に書き出し、約1カ月かけて描いた。
佐藤朋香さん(19)は「親しみやすいようポップな感じに」。立野絵美さん(19)は「陰影のつけ方に気を配った」。デザイン制作を統括した沢田万葉(ことは)さん(19)は秋田県横手市出身だ。「岩手は地域産品が豊富な珍しい県だと思う。ロッカーを見た人が、各地に足を延ばすきっかけになれば」と思いを込めた。
ロッカーは3月17日のリニューアルオープン直後からツイッターで「見ているだけで楽しい」といったコメントが書き込まれ、反響を呼んだ。4月24日に北海道函館市から観光に来ていた女性(30代)は「醬油(しょうゆ)団子」の描かれたロッカーを使用。「番号でなく、イラストで預けた場所を覚えられていい」と話していた。(加茂謙吾)