ダイハツ工業は9日、同社ラインナップ最廉価の軽自動車「ミライース」を、約6年ぶりに全面改良して発売した。普通車にも引けをとらない衝突回避システムを用意し、安全性能を重視する高齢ドライバーや主婦層の取り込みを図る。
ミライースは2011年9月、低燃費と低価格を掲げ、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に続く「第3のエコカー」と銘打ち市場投入。スズキも同年12月、同じコンセプトの「アルトエコ」を発売して追随した。しかしその後、高品質をうたったホンダの軽「Nシリーズ」のシェア伸長や、三菱自動車などの燃費偽装問題による消費者のカタログ燃費への不信感の高まりを受けて、燃費性能に特化したベーシックモデルは存在感が薄れていた。
全面改良された2代目ミライースは、走りの質感の向上を目指した。ステアリングやサスペンションのチューニングを見直し、苦手とされてきた高速域での安定性を増したという。ボディー部材に樹脂素材を多用するなどして先代に比べて80キロの軽量化を達成。価格上昇を抑えるためHVは設けず、3気筒ガソリンエンジンとCVT(無段変速機)の組み合わせで効率良く馬力を稼ぐ。カタログ燃費は1リットル当たり35・2キロ(二輪駆動)で先代と変わらないものの、実燃費は向上が見込まれる。
さらに、ダイハツが最も強調するのが、高齢者の運転事故が相次ぐなどして需要が高まっている安全装備の充実だ。誤発進防止装置や歩行者にも対応した自動ブレーキなど、上位車種並みの機能拡充に加え、軽としては初となる車体四隅への障害物センサー配置といった先進装備を用意した。この日都内であった発表会で、三井正則社長は「最もベーシックなクルマなだけに、高齢者の顧客も多い。安心・安全をダイハツの一つの軸にしていきたい」と狙いを語った。
価格は消費税込み84万2400円から。月9千台の販売を目指す。親会社であるトヨタやスバルにもOEM(相手先ブランドでの生産)で供給される。(北林慎也)